アトリエツアーなどもあり、作品についてひとと話す機会がここ最近多いのですが、『モチーフをどういった基準で選んでいるのか。なぜ家やカーテンといったものを描くのか』ということをよく聞かれます。
そういった質問に対しては、表層を表すイメージが素材として使いやすいから。という答えをしているのですが、よくよく考えてみると、表層を描くということはその表層に覆われている内側を作り出すことであり、その内側がとても大事なんですね。
たとえば家を描く。外壁を描いて屋根を描いていくとその内側に空間が生まれる。その空間には家具が置かれ家族が生活をしているかもしれないし、空き家かもしれない。でもその内側を想像させるものをあえて一切描かない。描かないことで鑑賞者のなかでその空間が空虚に、だけど濃厚に広がってゆく。その深さは余白と通じるものがあるかもしれない。
表層に覆われて見えない内側を感じさせるという要素を意識できるようになり、また作品が展開する可能性ができました。